小判には江戸時代の前に作られたもの、江戸時代に発行されたものに分けられます。特に価値があるものは、江戸時代前(1500年代後半)に鋳造された小判で、買取相場も高い値段で推移しています。ここでは、これまでどんな小判が作られて来たのか、それぞれ小判の知っておきたい特徴などをご紹介していきます。
・江戸時代以前に発行された小判
これからご紹介する2種類の小判は、1500年代後半に鋳造されており、いずれも古銭市場ではプレミア価値がつくものもあり、買取相場でも高い値段を推移しています。
それではそれぞれご紹介していきます。
駿河墨書小判(するがすみかきこばん)

出典:経済学研究科所蔵の古貨幣コレクション
金銀図録及び大日本貨幣史によると、文禄4年(1595年)に鋳造されています。日本の歴史の中でも最古の小判といわれており、見つかっている小判もほんの数枚。そのため、買取金額も非常に高く、約100万円以上の価値がついています。
武蔵墨書小判(むさしすみかきこばん)

出典:aucfan
江戸時代に作成された小判として有名なのが、武蔵墨書小判です。この小判は安土桃山時代と江戸時代をつなぐ小判としての役割を持っています。この小判にも墨書きが用いられており、『武蔵壹兩光次』という墨書きが表面に記されています。
鋳造された量は少なく、さらに後年はこの小判を回収して新たな貨幣を鋳造したという経緯があって、オリジナルのまま残っているものは買取相場がかなり高くなっています。
平均的に100万円以上の価値が付いており、コレクターの間では大変人気の小判です。
・江戸時代に発行された小判
江戸時代に入ると、小判は本格的に日常生活で使用され、庶民の間でもお金としての概念が浸透していきます。
ここでは、江戸時代に発行された小判について発行されたものごとにご紹介していきます。
慶長小判(けいちょうこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
関ケ原の戦いがあった翌年の慶長6年(1601年)に発行された小判。慶長小判は、徳川家康による天下統一と、江戸幕府が初めて発行した貨幣としても有名です。この小判の特徴としては、サイズが大きく他の小判に比べて金の純度も高いということ。また、慶長小判には極印や製作場所の違いで江戸で作成された「江戸座」、京都で作成された「京座」、現在の静岡で作成された「駿河座」など細かく分類されます。
種類によって開きはあるものの、買取相場は、状態が悪ければ10万円、良ければ170万円とかなりの差があります。
元禄小判(げんろくこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
前述で紹介した慶長小判は金品位が高く、流通量もそこまで多くはないため、一般の商業界にそこまで浸透することがありませんでした。そこで江戸幕府は、慶長小判に銀を混ぜた元禄小判を作成します。2枚の慶長小判に銀を足し、3枚の元禄小判を作ったことで、小判の量産に成功し流通量も一気に増えました。これによって商品の売買が簡単に行えるようになって経済発展が加速していきます。前述のように金貨としての価値は低いのですが、江戸時代の経済を発展させた小判という点では、大きな価値を持っています。
買取相場としては、50万円から100万円といわれています。
宝永小判(ほうえいこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
江戸幕府がさらに経済活性化を促進するために導入されたのが宝永小判で、1700年の初期である宝永7年頃に発行されました。
金品位を落とした元禄小判は、脆く折れやすいという欠点があり、良質であった慶長小判の復帰が望まれていました。ですが、この時代は金の産出が衰退していたということもあって、充分な量を確保できませんでした。そこで、小判を小さくすることで金の含有率を上げ、慶長小判と同等の金品位となっています。
これまで紹介してきた小判と比べると、サイズは小さいですが金品位が高く、状態が良いものだと100万円前後で、通常のものであれば大体50万円の買取相場となっています。
正徳小判(しょうとくこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
正徳小判は鋳造された期間がとても短く、1714年(正徳4年)の5月から8月ごろまで作成されていたとされる小判です。その鋳造期間の短さから流通量も少なく、とても希少性が高い小判なので買取相場は100万円以上といわれています。
享保小判(きょうほうこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
享保小判は、正徳小判のあとに鋳造、流通されました。この小判は、約20年以上に渡って鋳造されたという経緯があります。そのため、今でも大量の享保小判が発見されています。
金品位は慶長小判と同等であるにも関わらず、流通量が多く希少性も低いため買取相場はそこまで高くありません。平均的な買取相場は13万円前後で、状態がよかったものであっても大体40万円ほどの金額となります。
元文小判(げんぶんこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
この小判は、70年以上という非常に長い期間に渡って発行され続けました。享保小判のマイナーチェンジ版という立ち位置でもあるためか、金品位も低く流通量もかなり多いためそこまで買取金額はつきません。
元文小判が発行された期間は、製造と流通の安定期に入ったということもあってか、現存するものも多く、コンディションが良くても10万円以上の値段がつくことはほとんどありません。
文政小判(ぶんせいこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
文政小判は、これまで発行された小判の中でも金の含有率が一番低いもの。古銭の価値は金の含有量と比例しませんが、買取相場から見るに先述の元文小判よりも若干低いか、同程度の買取金額である10万円前後となっています。
天保小判(てんぽうこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
1837年(天保8年)に鋳造された小判。このころになると、流通しているお金は小判だけではなく丁銀、銭貨と呼ばれる小判よりも価値の低い古銭の方が多く発行されるようになってきます。金の含有量は文政小判とほとんど変わりませんが、天保小判自体の発行枚数の少なさから買取価格は若干高め。ほとんどは6万円前後ですが、状態が良いものであれば40万円を超える場合もあります。
安政小判(あんせいこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
安政小判は、1859年(安政6年)に3ヵ月間だけ発行された小判です。発行期間が短いということで流通量も少なく、希少価値が高くなっています。この小判はアンティークコインとしてコレクターの間ではとても人気です。日本が開国した際、国内にあるお金が海外に流れないように作成された小判で、その中でも献上判と呼ばれるものは、現在でも高値で取引されています。買取金額は安くても10万円で、状態が良いもので珍しいものであれば90万円以上の金額を期待することが出来ます。
ですが、安政小判の多くはアメリカに流れてしまっているため、国内に残っている数はわずかしかないと言われています。
万延小判(まんえんこばん)

出典:日本銀行金融研究所「金融研究」第12巻第2号
万延小判は江戸時代の最後に発行された小判。この小判は、金の含有量やサイズも小さくなっており、人によっては雛小判と呼ばれています。鋳造期間も短く、発行年度が新しいことや金の含有量が低いため、買取相場は低め。状態が良くても10万円前後、平均で2~4万円くらいの金額となっています。