プラチナはジュエリーや工業製品によく使われる素材で、貴金属買取の人気商材として積極的に取引されています。
プラチナは希少性が高く、かつては1グラムあたり7,500円という高値で取引されていましたが、その後プラチナ相場は低迷しています。
この記事では、プラチナ価格の下落に影響を与えた要因と、最新のプラチナ相場や将来的なプラチナ相場の見通しについて解説します。
プラチナの価値が比較的安定している今、プラチナ製品をお持ちの方は、ぜひ現在の価値を調べてみてはいかがでしょうか。
【2001年~2023年】プラチナの相場推移を振り返る
プラチナ価格の将来的な変動を理解するには、過去の市場動向や世界経済の動きを分析することが重要です。ここでは2001年から2023年のプラチナ相場を振り返ります。
【2001年~2010年】プラチナ相場がピークとなり1g=7,500円台を記録
最高 | 最低 | 平均 | |
2001年 | 2,574円 | 1,671円 | 2,142円 |
2002年 | 2,467円 | 2,001円 | 2,238円 |
2003年 | 2,987円 | 2,372円 | 2,634円 |
2004年 | 3,329円 | 2,782円 | 3,008円 |
2005年 | 3,968円 | 2,871円 | 3,245円 |
2006年 | 5,145円 | 3,724円 | 4,337円 |
2007年 | 5,705円 | 4,334円 | 5,001円 |
2007年 | 5,705円 | 4,334円 | 5,001円 |
2008年 | 7,589円 | 2,454円 | 5,409円 |
2009年 | 4,411円 | 2,749円 | 3,717円 |
2010年 | 5,385円 | 4,197円 | 4,635円 |
出典:田中貴金属
2001年〜2010年は、プラチナ相場が大きく変動した期間です。2008年にはプラチナ価格がピークに達し、1gあたり7,589円という高値を記録しましたが、翌年には大幅に下落するなど、世界経済が大きくプラチナ相場に影響しました。
この期間にプラチナ市場に影響を与えた重要な出来事を見ていきましょう。
2001年:ITバブル崩壊
1990年代前半のバブル崩壊から、1990年代後半のアジア通貨危機を経て、2000年ごろからITバブル崩壊が始まります。これは実態を伴わないインターネット関連企業や株式への過剰投資が原因で、日本経済は「第三次平成不況」と呼ばれるほどの打撃を受けました。
プラチナは株式市場の影響を受けやすく、ITバブル崩壊はプラチナ相場にも大きな打撃を与え、相場が低迷しました。
2003年~2006年:アメリカ、中国の住宅バブル
2003年から2006年にかけ、アメリカと中国で住宅や不動産のバブルが発生して世界経済に大きな影響を与えました。バブルによる好景気がプラチナ相場を後押しし、徐々にプラチナ相場が値上がりした期間です。
2004年~2008年:世界的なオイルバブル
2004年頃から、原油やその他の資源に関する世界的なバブルが発生しました。さらに、以前から続いていたアメリカと中国の住宅バブルも追い風となりプラチナ価格が急騰。2008年には最高値となる7,589円に達しました。
2007年~2010年:世界金融危機
2007年9月から顕在化したサブプライム住宅ローン危機を発端としたリーマン・ショックと、それに連なる一連の国際的な金融危機により「世界金融危機」が発生しました。世界的な経済衰退を迎えたことで、高騰していたプラチナ価格は一気に下落します。
2010年:南アフリカでワールドカップを開催
南アフリカは、プラチナの採掘量が世界の7割を誇る資源国です。南アフリカでワールドカップが開催されたことでGDPが上昇し、プラチナの相場も上昇しました。
【2011年~2022年】低迷したプラチナ相場は徐々に回復傾向へ
次に、2011年から2020年までのプラチナ市場の動向について詳しく見ていきましょう。
最高 | 最低 | 平均 | |
2011年 | 5,054円 | 3,626円 | 4,522円 |
2012年 | 4,636円 | 3,577円 | 4,078円 |
2013年 | 5,305円 | 4,217円 | 4,740円 |
2014年 | 4,977円 | 4,298円 | 4,759円 |
2015年 | 4,928円 | 3,367円 | 4,205円 |
2016年 | 3,890円 | 3,207円 | 3,535円 |
2017年 | 3,816円 | 3,287円 | 3,523円 |
2018年 | 3,678円 | 2,815円 | 3,215円 |
2019年 | 3,438円 | 2,870円 | 3,120円 |
2020年 | 3,684円 | 2,321円 | 3,114円 |
2021年 | 4,481円 | 3,344円 | 3,927円 |
2022年 | 4,774円 | 3,621円 | 4,132円 |
出典:田中貴金属
2007年のリーマンショックで落ち込んだプラチナ相場は、2013年頃に1gあたり5,000円台まで回復しました。しかし、ディーゼル車の需要減や新型コロナウイルスの影響で再びプラチナ相場は下落。2021年以降は景気の回復とともに徐々に相場も上がりつつあり、今後の相場動向が期待されます。
2013年:産業用プラチナの需要が高まる
プラチナの需要は主に宝飾用、自動車用、産業用の3つがありますが、2013年は産業用プラチナの需要が大幅に高まった年でした。宝飾用や自動車用の需要は低迷したものの、化学業界や半導体業界などでプラチナの需要が高まったことで、プラチナ相場をアップさせました。
2015年:ディーゼル車需要の減少
2015年に、フォルクスワーゲンによる排ガス試験不正問題が発覚しました。これにより欧州を中心に消費者のディーゼル車離れが起こり、自動車用のプラチナ需要が大きく下がりました。
2015年:コロナ禍による経済不安
2020年頃から新型コロナウイルスが流行したことで、世界経済が全体的に低迷しました。プラチナ相場もその影響を受け、過去10年間で最低価格となる1gあたり2,321円を記録しました。
【2023年】4,000円台で安定した推移が続くプラチナ相場
最高 | 最低 | 平均 | |
1月 | 4,668円 | 4,329円 | 4,486円 |
2月 | 4,329円 | 4,059円 | 4,173円 |
3月 | 4,354円 | 4,166円 | 4,261円 |
4月 | 4,864円 | 4,289円 | 4,552円 |
5月 | 4,884円 | 4,676円 | 4,756円 |
6月 | 4,742円 | 4,305円 | 4,521円 |
7月 | 4,489円 | 4,256円 | 4,367円 |
8月 | 4,673円 | 4,215円 | 4,389円 |
9月 | 4,627円 | 4,344円 | 4,464円 |
10月 | 4,562円 | 4,226円 | 4,372円 |
11月 | 4,625円 | 4,260円 | 4,464円 |
出典:田中貴金属
2023年のプラチナ相場は、各国で金融緩和政策が実施されたことや、パラジウム価格の高騰によるプラチナの需要増などが相場を後押し、安定した価格で推移しています。
特に、ガソリン車の排気ガス浄化触媒としてよく使われていたパラジウムの価格が高騰したことで、プラチナを代替として使う動きが高まり、プラチナ需要が伸びたことが価格回復の大きな理由です。
【2024年〜】プラチナ相場の今後の見通しは?
2024年以降のプラチナ相場は値上がりが期待されているものの、急激に値上がりしたり、金との価格差が埋まるほどの価格回復はそれほど期待できないでしょう。
今後のプラチナ相場の見通しを、プラス要因とマイナス要因の両方から見てみましょう。
プラチナ相場のプラス要因:世界経済の回復や自動車需要の増加
2024年は、新型コロナウイルスの流行が一段落し、景気回復が期待されています。プラチナ相場は株価と連動する傾向があるため、世界の経済状況がよくなると今後のプラチナ相場にも好影響が出るでしょう。また、ガソリン車の自動車触媒として使われていたパラジウムが年々高騰しており、コストカットのためにプラチナを使用するという流れになっています。プラチナの需要が高まればそれだけ相場も上がるため、今後プラチナ需要が好調に回復することが期待されています。
プラチナ相場のマイナス要因:地政学リスクやディーゼル車離れ
地政学リスクはプラチナ相場のマイナス要因となります。ロシア・ウクライナ情勢の悪化以降、世界各地で地政学リスクが高まっているため、いつ世界的な不況が起こるかがわからないのが現状です。また、パラジウムの高騰でディーゼル車の需要は回復しつつありますが、2015年のフォルクスワーゲンによる排ガス試験不正のような問題がまた起こると、一気にディーゼル車離れが進む可能性もあります。
今後のプラチナ相場は、短期的に見れば比較的安定した推移を続けながら、値上がりすることが期待されています。しかし、新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ情勢のような、誰も想像できなかったようなリスクがいつ起こるかわかりません。プラチナの売却を検討している方は、相場が安定しているうちに査定してみることをおすすめします。
プラチナの相場は何で決まる?
プラチナの相場を予想するには何が相場に影響しているのかを知る必要があります。
ここではプラチナ相場に影響を与える3つのポイントを解説します。
株価や景気の動向
プラチナは株価や景気との連動性が高いのが特徴です。そのため、プラチナの相場動向を予想する際には、国内外の株価や世界経済を参考にするといいでしょう。
プラチナは主に工業用貴金属として取引されているため、好景気で消費が促進されると需要が高まります。もちろんプラチナは装飾品としても人気が高いため、好景気であればプラチナ製装飾品の販売量も増え、相場が上がります。
株価や景気は地政学リスクや各国の金融政策など、さまざまな要因で変化します。プラチナを金融資産として持つ際は、世界経済のあらゆる動向に注意しておくことが大切です。
ディーゼル車の需要
プラチナは、全体の65%以上が工業用として取引され、その中でもディーゼル車の排ガス媒体向けに使用されるものが40%を超えます。そのため、ディーゼル車の需要が高まると、プラチナの消費も高まり、相場が上昇します。
近年はディーゼル車よりもガソリン車の方が普及していることや、ディーゼルエンジンの不正問題もあり、排ガス媒体へのプラチナ使用は減ってきています。
しかし、ガソリン車の排ガス媒体として使われるパラジウムが高騰しているため、プラチナの需要は徐々に回復しています。ディーゼル車の需要が今後高まれば、プラチナの相場も上がるでしょう。
南アフリカの経済事情
世界にあるプラチナの7割は南アフリカで発掘されているため、プラチナの価格には南アフリカの経済が深く関係しています。南アフリカの経済状況が悪化すれば、プラチナの生産に影響が出ます。また、南アフリカの通貨である「ランド」の為替レートは、プラチナ相場の動向を知る上で重要なポイントです。
ランドが下がるとプラチナの価値も下がりますが、経済悪化で生産量が減れば、プラチナの価格は上がります。この微妙なバランスによって、プラチナの相場が変動します。
プラチナの長期的な運用をするのであれば、経済の動きを見るのと同時に、南アフリカの経済に注目しておくとよいでしょう。
プラチナと金の値動きの違い
金とプラチナは、どちらも現物資産として人気の貴金属です。
しかし、金とプラチナは全く異なる相場の動きをするため注意が必要です。ここでは、プラチナと金の値動きの違いを簡単に解説します。
プラチナは有事に弱い
金は「有事の金」と呼ばれ、地政学リスクや経済的なリスクに強い金融資産として人気があります。景気が悪くなり、株式が下落すると金の価値が上がるため、金は株式投資のリスクヘッジとして買われることも多いです。
プラチナも金と同じ貴金属のため有事に強いと思われがちですが、プラチナは景気や株式と連動して値動きする性質があるため、有事には弱いです。株式などのリスクヘッジになる金融資産を選ぶなら、プラチナではなく金を選ぶのがおすすめです。
プラチナは投機性が高く短期保有向け
金は安定性の高い資産で、長期保有に向いている貴金属です。それに対して、プラチナはハイリスク・ハイリターンで投機性が高い貴金属とされています。
そのため、プラチナは長期保有より短期保有が向いているといえます。
希少性の高さはプラチナ、価値の高さは金
プラチナは、金と比べて遥かに埋蔵量が少なく、産出国も限られています。プラチナの年間産出量は金の年間産出量の10分の1程度といわれており、金よりプラチナの方がはるかに希少性が高いです。
しかし、2023年12月現在、金相場は1gあたり1万円を超えていますが、プラチナの価格は1gあたり4,600円程度です。
プラチナのほうが希少性が高いのに、金のほうが価値が高いのは、需要の差によるものです。プラチナはジュエリーとしての人気が金よりも低く、工業需要も減少しています。金はジュエリーとして世界的に人気があるうえ、社会情勢の不安から需要が上がっているため、価値が高くなっているのです。
この逆転現象はまだしばらく続くことが予想されており、プラチナ相場と金相場の動向には、今後も注意が必要です。
プラチナの相場は社会情勢や経済の動きをチェック!
プラチナ相場は、社会情勢の不安やプラチナの需要減によって価格が下がっていますが、今後は徐々に相場の回復が期待されています。
プラチナは金とは異なり、株価と連動した値動きをします。プラチナの相場推移を予想する際は、社会情勢や経済の動きをチェックしておきましょう。
また、プラチナはハイリスク・ハイリターンで短期保有向けの金融資産とされています。
プラチナをお持ちなら、相場が安定しているうちに今の価値を調べておくのがおすすめです。